柳生街道(奈良春日~柳生~笠置)

南明寺

 円成寺から車道を少し歩いて民家脇の細い道を下り、雑木林の中をおよそ二キロ歩き林を抜けると棚田が広がる集落が見えた。

 地図を確かめ白砂川の細流を渡り車道を避けて田圃の中を迂回するように進むと、こんもりとした鎮守の森の中に延喜式内社に名を連ねる大柳生の氏神様、夜支布やぎう山口神社があった。

 ふりがなが振られていなければとても読めない神社名を見てこの辺りが大柳生の集落である事を知った。柳生とは元々この字「夜支布やぎう」が当てられていたそうである。

 夜支布山口神社の祭神は素盞嗚命すさのおのみことで境内に春日造りの立磐たていわ神社が有り(延享四年(一七四七年)春日大社の第四殿を移築した)神社のうしろの磐が御神体である。八月十七日に行なわれる当神社のお祭りに奉納される大柳生太鼓踊りは七百年の伝統を持つとの事。

 神社で小休止を考えたが団体の先客に遠慮して先を急いだ。東海自然歩道は頑なに車道を避け、わざわざ地道を選んで付けられている。

 田圃の畔を歩き、軒を接する民家の路地をくねくねと曲り、舗装した道に出ると再び畔道を指し示す道標が有った。車道を横目に草が生い茂るあぜ道を迂回して辿った先に南明寺なんみょうじいらかが眼に入った。

 南明寺は宝亀二年(七七一年)の創建と伝えられる古刹で境内には鎌倉中期に建造された簡素な造りの本堂が有り、重文に指定されている。 丁度、昼時でも有り、境内には柳生を訪れる人々がそこかしこの木陰で弁当を広げていた。我々も本堂の縁に腰掛けて昼食を摂った。


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