文明の十字路 トルコ紀行

妖精の煙突

妖精の煙突 文明の十字路トルコ紀行  ゼルヴェの谷は自然に作られたとは思えないシメジのお化けか巨大なキノコの形をした奇妙な岩が林立する奇岩地帯である。

 西洋ではこのキノコ型の岩を「妖精の煙突」と呼ぶそうである。風雪が何千年、何万年もかけて作り上げた想像を絶する不思議な景観である。

 この地方は火山の噴火により火山灰が降り積もって出来た柔らかい凝灰石ぎょうかいせきと溶岩が固まって出来た固い玄武岩が層になって積み重なった台地である。

 その台地を風と雨と氷雪が柔らかい凝灰石を浸食し、上部を覆っていた重い玄武岩が崩れ落ち、その一部が帽子のように凝灰石の柱の上に残ったのが「妖精の煙突」と呼ばれる奇岩である。

妖精の煙突-2 文明の十字路トルコ紀行  右の写真の景観も何千年、何万年後には「妖精の煙突」に成っているかも知れない。雨と川に浸食された谷が有ればこの様な景観はこの辺り一帯で見ることが出来る普通の景色である。「妖精の煙突」と呼ばれるのは、奇岩が林立するこの不可思議な景観を見て古代の人々はキノコ岩に妖精が住んでいると考えた。そして、あの重い玄武岩を柱のような岩に乗せたのは妖精の仕業に違いないと云う訳で「妖精の煙突」と呼ばれた。円錐形の凝灰石の全てに玄武岩が乗っている訳ではないのでこの様な神話が作られたのであろう。

 土産物店の店先に大型の犬が数頭放し飼いにされていた。観光客に慣れているのか近付いてもおとなしくしており雪道を「妖精の煙突」の方に歩き出すとその犬は案内係の如く数歩先を歩き出した。時々後ろを振り返り付いて来るのを確認するような仕草であった。

 その犬はラブラドール・レトリーバーより一回り大きくベージュの皮毛、垂れ耳、黒いマズル(口先部分)、トルコ原産のカンガル犬かなと思い帰国してカンガル犬を調べてみた。カンガル犬は想像していたより大きく体高八十センチもある超大型犬でグレート・デーンより大きな巨大犬であった。どうやら「妖精の煙突」で放し飼いにされていた大きな犬は本物のカンガル犬とは違う様であった。

 トルコ原産のカンガル犬は優秀な牧羊犬で遊牧民と共に暮らしてきた犬である。同じ牧羊犬でも我が家で飼っているボーダーコリーは羊が散り散りにならない様に一団にまとめる為と柵に追い込む為に走り回る犬であるが、カンガル犬は狼から羊を守る為に羊飼いの相棒として危険を察知し果敢に立ち向かう犬である。そして、訓練をしなくとも犬の本能と先輩の犬を見て学習し行動する賢い犬である。

 因みにジャパン・ケンネル・クラブの登録犬種を調べてみたが日本には一頭も登録されていなかったが新潟県柏崎市の柏崎トルコ文化村(2005年3月に閉鎖された。)に飼われていた。


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