文明の十字路 トルコ紀行

ナザールボンジュウ

ナザールボンジュウ 文明の十字路トルコ紀行  トルコ各地の土産物店には厚みの有るブルーのガラスに白い円を描き円の中にブルーの「目玉」模様を描いた大小さまざまなペンダントやキーホルダーが売られている。

 これはナザールボンジュウと呼ばれるトルコのお守りである。日本ではお守りは神社仏閣で売られているがトルコでは土産物店やガソリンスタンドの売店で売られている。高価な物から廉価な物まで値段は様々である。

 ナザールボンジュウが目玉の形をしているのは視線を合わした者を石に変えるメドゥサの眼を現している。この目玉のお守りを身につけていると邪悪な視線を跳ね返し、身を守ってくれると信じられている。

 なぜ偶像崇拝を排するイスラム教徒のトルコ人がメドゥサ信仰を持ち続けているのか不思議で有るがナザールボンジュウはお守りとしてトルコ人に定着している。

 ナザールボンジュウに姿を変えたメドゥサはゴルゴン三姉妹の末っ子で元は美しい乙女であった。特に髪の毛が美しかった。メドゥサはアテナより自分の髪の毛の方が美しいと自慢した事がアテナに知れ、アテナの怒りを買って全ての美しさを奪われてしまった。

 美しい髪の毛は蛇に変えられ、残酷な怪物に変えられてしまった。醜い姿を一目見た者は誰であろうと石にされてしまった。

 この怪物を退治するためにペルセウスが遣わされた。ペルセウスはアテナとヘルメスに可愛がられていた。アテナからは鏡の様にピカピカに磨き上げられた楯を、ヘルメスからは翼の付いた靴と何でも切り落とせる鋭利な剣を借り受け、ヘルメスに教えられて翼の付いた靴を履いてニンフに会いに行った。ニンフはかぶると姿が見えなくなる兜とメドゥサの首を入れる丈夫な袋を授けた。

 ペルセウスは姿が見えなくなる兜をかぶり、怪物メドゥサが眠っている間に楯に映るメドゥサを見ながら近付き、ヘルメスから借り受けた剣でメドゥサの首を切り落として袋に入れた。メドゥサの首から血が飛び散り、その血から天馬ペガソスが生まれた。

 ギリシャ神話ではメドゥサは怪物として描かれているが古くから邪悪な者を退ける神として崇められたのであろう。エフェソスのハドリアヌス神殿の門にメドゥサの浮き彫りが有り、ケルスス図書館の二階のファサード(正面の装飾)にもメドゥサの浮き彫りがあった。

 中央アジアからアナトリアに入ったトルコ人はこの信仰を受け継いだのであろうか。


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